
そして恵が、妊娠に気がついた時のこと…
彼女は仕事中の久に電話し、
「妊娠できたかもしれない」
と嬉しそうに報告するのです。
しかし、
「あっそう、分かった…」
と久からは、そっけない態度を取られてしまいます。
さらには良雄が生まれた後も、久の態度が一向に変わりません。
その時に、泣きながら会った本城にも『別れろ』と助言されてしまうのです。
もう、いつ心が折れてもおかしくない恵でしたが、それでもまだ心のどこかで久との離婚を迷っていました。
おそらく
『仕事が一段落すれば、どこかで家族のことを顧みてくれるかもしれない』
と密かな期待も持っていたのだと思います。
きっとそれだけ久のことを愛してしまったのでしょう。
しかし、そんな恵の淡い期待をも打ち砕く、決定的な出来事が起こります。
当時の久は、誰も信用できない人間だったため、良雄のことも
「本当の自分の子供なのか?」
と疑っていたのです。
そのため、良雄を遊園地(トレジャーランド)に連れて行き、恵に極秘でDNA鑑定までしてしまったのです。
そして、その結果報告書を、久はトレジャーボックスに隠し続けていたのです。
恵は、久が良雄をトレジャーランドに連れて行ったことを知りませんでしたが、偶然にも、クレジットカードの支払明細を見てしまい、そこに記載されたDNA鑑定をした会社の名前を目撃してしまいました。
その事が発端となり、
『もうこの人とは夫婦関係を築くことができない』
と離婚届を単身赴任していた久のもとに送り届けていたのです。
久は、毎日電話で『離婚を留まるように』と、事故直前まで『仮面をかぶったようだ』と言われながらも説得し続けていたのです。
あまりに執拗に説得する久に心を動かされ、恵は久と会って直接話をすることを了承。